「荷物をぜんぶ家に放り出したら、鍵を閉めるの。遺書をひらいた携帯を玄関に閉じ込めて、いちばん身軽なカッコで行くの。夜の川はきっとどこまでも深いから、こんな私でも沈めるの。神さま、神さま、お願いします。今日の一回だけでいい。ちゃんと成功しますように」

「アリスを殺したのは私じゃない!アリスは私に殺されたんだ!だから私はやってない!私は見ているしかなかった!アリスが八つ裂きにされるのを、ちいさなからだがぼろぼろになるのを、見ているしかできなかった!だからアリスは殺されたんだ!私じゃない!私がやったんだ!」

紅茶をひっくり返して笑えよ。まともがいちばん堪えるんだって知らないお前じゃないだろう。手足をばたつかせ泣き喚いたってお前のアリスは戻らない。だってお前が捨てたんじゃないか。お前がぐちゃぐちゃにしたんじゃないか。まだ両手は温かいだろう。自分の心臓はどんな味がした?愚か者め!

アリスはいない。
私だけ、私だけがひとりぽっちでここにいる。

アリス、あなたはどうやって彼らを愛していたの。
アリス、あなたはどうやって私を愛していたの。

アリス、あなたはどうして道連れにしてくれなかったの。

だれがアリスを殺したの。私の両手は真っ赤だったわ。
いとしいアリス、だいじなアリス、あなたがいなくなってしまって、私はずっと欠けたまま。
ちいさなアリス、ぷちゅんと踏み潰したのはだれ。

アリス、アリス、ごめんなさい。

ちいさな私。かわいいアリス。
あの子を返して。あの子を返して。
夢にくちづけ、あかるい笑顔、世界をまるごと愛していたのね。
いいこのアリス、やさしいアリス。
ちいさな私。

あの子を返して。

ちいさなあの子は夢みてた。
やさしくて、あったかくて、ふうわりとして、きもちのよい、穏やかですてきなものなのだと、ちいさなあの子は夢みてた。
ああ、だけど、もう鳥は鳴いてしまったよ。
おはよう、おはよう。
夢は終わり、あの子は死んだ。

「ピアスをあけたの。これであたしも一人前なの。きらきらひかるお星さま、いっとうきれいにひかったやつをちいさな宝石に閉じこめて、それをお耳につけたのよ。これであたしも一人前なの。どこにでも行ける、魔法なのよ」